石松チ明インタビュー:世界をもうちょっとだけ優しい場所に

Jet-Black Galleryは、不美人画家 石松チ明に対し独占インタビューを行いました。インタビューは、不美人画の誕生秘話等、大変興味深い内容となっているので、是非お読みいただけたら嬉しいです。加えて、Jet-Black Galleryでは、石松によるオリジナル作品3点が発売中です。そちらも是非ご覧いただけたら幸いです。

— 作品を制作する上で一貫したテーマがあれば教えてください。

私の最も大きい制作テーマは「人がベッドに横になることしかできなくなった時にでも見ることのできる絵」なのですが、そのために気をつけているのは「性死を忘れないこと」と「弱さを裏切らないこと」です。
—「不美人画」を描き始めたきっかけを教えてください。

四年ほど前、銀行でお金を下ろしている時に後ろでざわざわ声がしていました。なんだろうなと気にしつつ、お金を下ろし終わったので帰ろうと振り向くと「可愛くないじゃん」と言われました。どうやら男子高校生が私の後ろ姿を見て可愛いのではないかとざわめいていたが、顔を見たらそうではなかった、という事の顛末(てんまつ)だったようです。実際半年引きずるくらいのショックを受けました。失意の中で、これから私はどうすれば良いのかを考えました。人は変えられないから自分が変わるしかない、という言葉がある。でも自分の顔は変えられない。なら、もう世界を変えるしかないなあ、と思いました。私の持てる力を使って「美人じゃない顔も魅力あるかもなあと感じさせること」、それにより「人々に美の多角的な視点を与えてやること」、最終的には「世界をもうちょっとだけ優しい場所にすること」を目標に日々精神を削って頑張っています。

—「不美人画」を描く上で気をつけていることはありますか?

「不美人画」というテーマに限って言えば、油断するとすぐ美人になってしまうので気をぬかないように気をつけて描いています。

— 後に作品のテーマの一つとなるマゾヒズムの本を読み始めたきっかけがあれば教えてください。

3歳の時より感じていたいぢめたい・いぢめられたい自らの感情(おやゆび姫になって大きい手のひらで弄ばれる妄想、シンデレラになって継母と姉たちからこき使われる妄想、白雪姫になって毒リンゴを食べて倒れる妄想、底なし沼に足を取られてだんだん沈んでいく妄想、自分の夫が取引先に土下座させられる妄想等)をより深く知りたい、自分の嗜好性に合ったものたちに肩までどっぷり浸かってみたいという思いが、22歳の時にコップから溢れたことがきっかけです。一番最初はマゾッホの「毛皮を着たビーナス」を読んだと思います。

— 不美人画とマゾヒズム、この二つの関係性を教えてください。

私の大きな制作テーマは「世間が良しとしないもの、現実には確かにそこにあるのに綺麗な世界において仲間はずれにされているもの達にきらめきを見出す」なのですが、「マゾヒズム」はそのテーマのうちの具体例の一つ、「不美人画」は大テーマと「マゾヒズム」のどちらにも内包されている具体例の一つという感じです。

— 今後のアーティスト活動の予定を教えていただけますか?

10月には新宿のアートコンプレックスセンターでグループ展に参加します。11月には豊橋のハートセンターという病院での個展と、スコットランドでグループ展を控えています。海外初出品なのでウキウキしています。2月には今年大賞を受賞した「ペーターズギャラリーコンペ2019」の受賞者展に参加します。20点ほどの大量出品になりそうです。3月には名古屋三越にて個展をします。ここではこれまで続けて来た「不美人画」からテーマを変えてお届けする予定です。5月は池袋の東京芸術劇場にて選抜展があります。秋以降は東京の麹町なり銀座なりで個展していく予定です。