RoamCouchインタビュー:必要としてくれる人のために描くアート

Jet-Black Galleryは、日本が誇るストリートアーティストRoamCouchに独占インタビューを行いました。インタビューは、以下の3つのテーマに沿って実施されました。

1つ目は、毎年ハワイ・オアフ島で開催されている「POW! WOW! HAWAII」。同イベントは、世界中の著名なアーティストが集結し、1週間にわたり壁画を制作する催しです。今年2月、RoamCouchは、POW! WOW! HAWAIIに初参加し、ハワイ版『When You Wish Upon A Star – Hawaii (星に願いをハワイ)』をカカアコ地区のストリートに誕生させました。

2つ目は、福島県広野町で開催されたアート体験イベント「ひろのアートキャンプ」。今年9月、RoamCouchは、同イベントに参加し、地元の子どもたちと共同で町のシンボルである風車に壁画『Stardust(星屑)』を完成させました。

3つ目は、「ネオ浮世絵」。昨年末よりRoamCouchは、2014年にユネスコ無形文化遺産に登録された本美濃紙を活用したアート作品の制作に取り組んでいます。彼が理想と掲げる“日本文化”と“グラフィティアート”の融合。この二つの要素を結び付け、具現化した作品こそがネオ浮世絵と呼ばれるものです。

RoamCouchの昨今の活動をより深く知ることのできるインタビューとなっています。是非お読みいただけたら嬉しいです。

POW! WOW! HAWAII

— 記念切手型の壁画は、何か特別な狙いがあって制作されたのですか?

記念切手ならぬ、記念壁画のようにできればと思い、スマホなどで自分たちで撮影したときにちょうど壁画と被写体がポストカードのようになればと思い考案したものです。たくさんの人たちが記念撮影をしてくれていました。

— ハワイでの壁画制作で大変だったことがあれば教えてください。

どこの制作でもそうなんですが、天候でしょうか。ハワイでは雨や風のオンオフが激しく、他のアーティストさんたちも苦労されていましたが、半分屋内のような場所だったのでその点は助かりました。同じくステンシルを使うローガン・ヒックスシェパード・フェアリーの制作も拝見しましたが、やはり天候には参っている様子でしたね。

— 他のアーティストの壁画制作も目にしたと思いますが、刺激を受けたアーティストはいましたか?

ローガン・ヒックス、シェパード・フェアリー。ローガン・ヒックスは私が絵を始める時に大変刺激になったアーティストの一人で、ハワイで初めてオリジナルの壁画と制作風景を見たのですが、とてもよかったです。使ったあとのステンシルをキッチリ戻して梱包しているのが印象的でした。シェパード・フェアリーは実に組織化された制作工程で、唯一無二の存在らしい圧倒的なパワーと信念のようなものを感じました。

— 海外で初の壁画制作でしたが、ハワイで印象に残っている出来事があれば教えてください。

日系の人々の反応と興味をとても深く感じました。もちろんそうでない方たちも多く壁画を観に来てくれましたが、本当にたくさんの日系の方がハワイに住んでいて、そして私の絵に興味を持ってくれているんだなと感じる部分が多々ありました。ハワイは第二の故郷と言われる日本の方がいますが、解るような気がしましたね。

ひろのアートキャンプ

— 福島県広野町で完成させた壁画『Stardust(星屑)』のテーマを教えてください。

いつの時代も次世代、未来を担うのは若者であり、地域を真に元気づけるのは大人たちではなく子供たちだというのがテーマにあります。壁画は子供と動物が同じ方向を見上げていますが、見ている先には未来があります。
流れ星は願いを叶えると言われており、子供たちはそれぞれのカラーで流れ星を描いていますが、それによって自分達の体も傷ついています。現在の福島県、未来の福島県、そして福島に住む人々が未来に向けての大きなパワーのようなものを感じてほしい、そのような想いを込めています。

— 町のシンボルである風車に壁画を描くことは特別なことだと思います。プレッシャーは感じませんでしたか?

台風が近づいていたので、日程がタイトな分、天候で全く作業できなかったらどうしよう・・・という不安はありました。天候の不安は毎回ですが・・・笑

— 壁画制作には、地元の子どもたちも参加したようですが、彼らの反応はどうでしたか?

私にとって初めての試みでしたが、思ったよりも遥かに多い子供たち、そして大人の希望者も参加して、100個以上の星を追加しました。後半は星を追加できない程立てこんでしまって大変ではありましたが、殆どの子供たちは、自分たちも壁画を作ったんだ!という嬉しさに溢れているように感じましたね。

— 「ひろのアートキャンプ」に初参加して、どのような感想を持たれましたか?

行政、そして地域の人たちの想いを感じました。一回きりの自己満足に留まらないという熱意、未来を見据えた本気の復興への想いを終始感じていました。このような場所、そして人々に求められたことを光栄に思います。

ネオ浮世絵

— なぜ本美濃紙を描く対象として使おうと思ったのですか?

私の故郷でもある岐阜県で、これほどまでに凄い紙があるということと、世界中の人々がまだまだその存在すら知らないこと、そしてストリートアートと言えばスプレーですが、この強い染料と繊細な和紙が融合できたらという期待、これだけ揃えばもうやるしかないという想いでした。実際、本美濃紙へのペイントはとても難しいですが、完成した作品はこれまでに無い不思議な魅力を放っていると思います。

— 本美濃紙は、全て手作業で作られるため、生産量に限りがあると聞いています。故に購入することが難しいと推測しますが、どのように手に入れられたのですか?

職人さんに直に会いに行って、私がしたい事、そして想いをお伝えし、協力していただけないかとストレートにお願いしました。大変面白い試みであると快諾してくれ、これまでにない程厚い、何十層にも重ねた本美濃紙を私の為に作っていって頂けることになりました。

— 本美濃紙を使って作品を制作する上で、難しい点があれば教えてください。

相反するような特徴の両者ですが、落とし込むと得も言われぬ美しさを感じます。しかし、本美濃紙は紙自体にドーサやコーティングといった加工を全くしていません。その為スプレーの強さも相まって、毛羽立ちの発生や色乗りが悪くなることが多々あり、描く工程は非常に難しいです。

— 今後の活動を教えてください。

今後もこれまで同様、地域に還元できること、そして誰もしていないことにチャレンジしていくこと、がメインになると思います。私が何をしたいかという事はあまり考えていません。私を必要としてくれる場所や人のために描き続けて行きたいと思っています。

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